2学期終業式 式辞

2016年12月22日

本日2学期の終業式を迎えました。高3生はまだセンター入試・私大の一般入試・国公立の2次入試を控えています。体調管理をしっかりして、冬休みを過ごしてください。他の学年の皆さんも、学習に部活にと忙しいと思いますが、有意義な時間を過ごしてください。

 

今日は「T君と私たちの未来」というタイトルでお話しします。まずこれを見てください。これはT君の進研マーク模試の結果です。8科目を受け、その得点、全国の平均点、全国偏差値が載っています。カッコ内は昨年度の数値です。合計で見ますと全国偏差値が57.1です。国公立大172校のうち23校でA判定、関東の「MARCH」(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関西の「関関同立」でA判定が出ました。A判定とは合格可能性が80%以上を示しています。T君は東大を目指していたのですが、この結果を受けて進路変更することとなりました。
こんな個人情報をみんなに言っていいのか、T君とはだれのことか、と思った人もいるでしょう。実はT君とは、東ロボくんというAI(人工知能)です。国立情報学研究所の新井紀子教授をチームリーダーとして「AIの可能性と限界を明らかにしたいと始めたプロジェクト」で、2013年度から毎年センター試験の模試に挑戦してきました。数年前までは人工知能はまだまだ使い物にはならないと言われていましたが、<5年前、人気クイズ番組で人間のチャンピオンに勝つ>、<今年3月、世界トップ級の囲碁の棋士に勝つ>、<自動車の自動運転や医療診断、会計処理は実用化段階>、<製造業の「インダストリー4.0(第4次産業革命)」が進んでいる>、<20年後には今の仕事の半分がなくなる?> などのニュースに接し、AIは劇的に進化している印象がありました。この印象と東ロボくんの模試結果の間に、皆さんはギャップを感じませんか。

 

そのギャッブを人工知能学会フェロー、公立はこだて未来大学名誉学長、現在は東京大学先端人工知能学教育寄付講座特任教授の中島秀之氏のコラムから引用し説明します。
現在の人工知能の実力は一言でいうと、「5歳の子供に勝てない」です。人間の知能は子供の知能と大人の知能からできていて、子供の知能が全体の9割で、生きていくために必要な知能で、言い換えれば常識です。これをAIは苦手としています。一方大人の知能が1割で、学校のテスト、教科書や医学書などにある”言葉で書けるルールのこと”で、これをAIは得意としています。AIが抱えている問題に「フレーム問題」というのがあります。例えば、40度以上の熱を出した患者がいて、医者が医療システムに「熱を下げる方法は?」と尋ねたら「殺しなさい」と答えたっていうジョークがあります。人間同士なら常識があるから言わなくてもわかることが、AIには全部言わなければわからない。無数にある「常識」をどこまでAIに与えればいいのか、その「枠」が設定できないというのが「フレーム問題」の一例です。
ということで、東ロボくんは、文章の読解や絵の内容把握など、人間ならば常識的に判断できる部分が非常に弱く、あのような模試の結果になったのではといわれています。

 

さて、AIが進化した未来はどうなっているのでしょうか。映画ターミネーターのように、反乱したAIの機械軍が人類を滅ぼそうとするのでしょうか。先ほどの中島先生は、「将来的にはAIに働いてもらって、人間は働かなくてもよくなる」という未来像を描いておられます。AIを抜きにして私たちの未来を考えることはできません。興味のある人は、参考図書として『未来の二つの顔 』(創元SF文庫) ジェイムズ・P・ホーガン (著), 山高昭 (翻訳) と、これを原作として描かれた漫画版(講談社漫画文庫) 星野之宣 (著)を勧めておられました。ぜひ読んでみてください。

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